自閉症者は現在日本で、120万人(高機能自閉症者を含む)いると言われております。
これまで自閉症に根本的な治療法はないとされてきましたが、
近年の研究で腸内フローラの改善が自閉症に有効だという事がわかってきました。
えっ?自閉症って脳の障害でしょ、なんで腸が関係するの?
って思いますよね?
実は腸は第二の脳と言われる程、脳と密接な関係がある器官なんです。
分かりやすい例で言えば、緊張したときにお腹がキューっと痛くなる話ってよく聞きますよね?
これって脳が感じたストレスの影響を腸が受けたという事なんですね。
なぜこういう事が起きるかというと脳と腸は神経系で繋がっているからなんです。
近年の研究では、逆に腸の状態が脳に影響を及ぼすこともわかってきています。
自閉症と腸内環境の関係性
自閉症と腸内環境の関係性について
『「腸の力」であなたは変わる』の著者であるデイビッド・パールマター氏は以下のように述べています。
腸内細菌が、自閉症といった脳疾患の発症と進行の原因になっている可能性がある事も、
ついにわかってきたのだ。ここに誰もが納得できる証拠がある。
自閉症の子どもたちは腸内細菌の構成に特定のパターンがあるが、
そのパターンは自閉症でない子どもには存在しないのだ。さらに自閉症の人はほぼ一様に、胃腸に問題を抱えているという事実もある。
(デイビッド・パールマター 『「腸の力」であなたは変わる』 )
ちょっとわかりにくいかもしれませんが、
自閉症者と健康な人では腸内にいる細菌の種類(腸内フローラ)が違うという事です。
腸内の細菌の種類が違うということは、同じ食べ物を食べた場合でも
自閉症者と健康な人では腸内での反応が違うという事になります。
また、自閉症者の排便障害(便秘・下痢など)の割合は
健康な人に比べると多いというデータもあり、
これも腸内環境に違いがあると考えれば納得できる話です。
自閉症の原因と考えられている要因
自閉症には色々な症状があるので
原因も一つではないと考えられています。
自閉症の原因について
デイビッド・パールマター氏は以下2つを挙げています。
①リスク遺伝子の問題
両親からの遺伝と、突然変異による遺伝子が原因の一つ。
ただし、遺伝子を持っているからと言って必ずしも発現するわけではないし
また、発現が抑えるられる可能性があるとも書いています。
②妊娠~出産時の環境や出生後の腸内環境
抗生物質の投与や未熟児で生まれた場合など、
母体内で多様な細菌に触れ損ねた場合に
腸内環境が正しく作られず
結果、腸から脳に悪影響を及ぼす可能性があると言っています。
デイビッド・パールマター氏は①よりも②の問題の方が重要としています。
また、腸内環境を整えることで、①のリスク遺伝子の発現を抑えられる
可能性もあるとしています。
自閉症治療に効果がある腸内環境の改善について
同著でデイビッド・パールマター氏は自身の自閉症患者に対して
行った療法として以下の2つが効果があったとしています。
①薬品による腸内環境の改善
腸内環境の改善の為にプロバイオティクスとビタミンDを投与
これだけで、患者の不安感が激減し、いろいろな事に興味をもてるようになった。
(ただし、患者の腸内環境により必要・不要な細菌は様々なので
一様にこの対応でよいというわけではない)
②糞便微生物移植(FMT)による腸内環境の改善
糞便微生物移植(FMT)とは健康な人の便から
腸内細菌を取り出し、自閉症者の腸に移植し
腸内フローラを再構築する方法です。
便微生物移植(FMT)の施術後、患者は
とても落ち着いて会話できるようになり、
好き嫌いもなくなり、自発的に行動するようになったなど
症状が大きく改善されたそうです。
まとめ
現段階では残念ながら自閉症の発生原因や治療法は特定できていませんが、
今後の研究で腸内細菌が脳に与える影響のメカニズムが
解明されれば、自閉症の根本的な治療も遠い未来の話ではなさそうです。
はやく解明されて自閉症が根治されることを切に願います。
(参考文献)
著:デイビッド・パールマター 書名:『「腸の力」であなたは変わる』 三笠書房 2016年
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